近頃どうにも目が疲れやすい、遠くを見た後手元の書類を見るとピントが合いにくい…そんな症状に悩まされているあなた。
認めたくはないけど「もしかして老眼かも」と、うすうす感じ始めていませんか?
老眼鏡をかけるべきなの?どこでどうやって買えばいいの?
目と眼鏡のプロフェッショナルである視能訓練士が、そんな悩みを解決します!
初めての老眼鏡はどこでどうやって選べばいいかわかる
自分に合った老眼鏡の選び方がわかる
老眼鏡はどこでも売られていますが、実はけっこう複雑。選び方にはいろいろコツがあるんです。
選択を間違えると生活や仕事にも支障が出る可能性も。
快適な視生活のために本記事をお役立てくださいね。
老眼ってこんな症状
老眼を一言で言うと、「遠くがちゃんと見える状態で近くを見ると、ピントが合いにくく見えづらい症状」のこと。
遠くがちゃんと見える状態というのは、
- 普段から目のいい人は裸眼の状態のこと。
- 普段から近視の人は近視のメガネをかけた状態のこと。
「近視は老眼にならない」は誤解です。バッチリなります
老眼の症状は、
- 年齢
- 目の状態(近視、遠視、乱視)
によって現れる時期や解決策が異なります。
ピント合わせの力(調節力)は10代をピークに、20代からすでに弱まり始めています。
しかし若いうちはまだ力がたくさん残っているため、老眼を感じることはほとんどありません。
用語解説
近視(近眼)とは、メガネをかけないと遠くがハッキリ見えない目
遠視とは、
- 軽い遠視:ものすごく遠くがよく見える目
- 強い遠視:遠くも近くもメガネがないと見えにくい目
乱視とは、見えてはいるけどなんかブレて見える目
30代の老眼
- 30代半ばまではほとんど何も感じない
- 30代後半になると、ピントが合うのに若干時間がかかることも
遠視の程度によっては30代前半から
- 眼精疲労
- 近くにピントが合いにくい
といった症状が現れる
遠視の人は、早ければ30歳前後から老眼鏡をかけ始めた方がいい場合もあります
40代の老眼
- 生活環境によってはあまり老眼を自覚しない
- 度の弱いメガネをかけていると老眼を感じない
- 40代半ばを過ぎると、ピントの切り替えがかなり遅くなる
- 裸眼の方が近くが見やすくなる
- 夕方以降には手元が見づらくなり、眼精疲労を感じやすくなる
- 自分でも不思議なくらい激しい眼精疲労を感じる
- 近くだけでなく、遠くもかすんで見えることがある
- 午前中はいいが、午後になるととくに症状がひどくなる
- 眼痛、頭痛、肩こりなどに悩まされ始める
激しい疲労感は遠視の人の特徴です
50代の老眼
- 度の弱いメガネをかけていたとしても、外した方が近くが見やすくなる
- 裸眼で見るか遠近両用メガネをかけないと、近くは見えなくなる
- 老眼鏡がないと近くはほぼ見えない
- 人によっては遠くを見るときもメガネが必要(遠く用のメガネ)
60代の老眼
- 近くを見るときは眼鏡をはずすか、遠近両用メガネをかけないと見えない
- 強度近視の人は「老眼鏡」をかけることがある(今回の記事では割愛)
- 老眼鏡、または遠近両用メガネがないと近くはまったく見えない
- 遠視の程度によっては遠くもメガネがないと見えない
乱視の場合は?
乱視の場合はちょっと複雑で、一言では言えません。
乱視の目というのは、
- 近視寄りの乱視(近視性乱視)
- 遠視寄りの乱視(遠視性乱視)
- その中間の乱視(混合乱視)
の3タイプあります。
今回の老眼鏡に関して言えば、
- 近視寄りの乱視の人は「近視の人のケース」
- 遠視寄り/中間の乱視の人は「遠視の人のケース」
を参考にしてください。
乱視の説明は難しいので詳細は省きますが、「強度乱視の場合、老眼を感じにくい人もいる」ことはあります
眼鏡屋さんで測ってもらえば自分がどのタイプの乱視かわかります。
(もちろん眼科でもわかりますが、お金がかかります(-_-;))
老眼鏡はいつから使うべき?
老眼鏡の使い始めは勇気がいりますよね。(「老眼」ですから、「老い」を受け入れる勇気です…)
私も老眼を感じ始めるお年頃なのでハッキリ言いますが、最近疲れると思ったらもう始めましょう!
「老眼鏡かけたら老眼が進みやすくなる」のは都市伝説です。老眼鏡が必要なのに「まだまだ!」とがんばっていても、眼精疲労に悩まされるだけ。
早くラクになってしまいましょう。
一般的には40代半ばからが老眼鏡開始の時期ですが、年齢ではなく実生活で眼精疲労を感じているかを基準に考えてください。
ただし、もともとが近視なのか遠視なのかによって使い始め方が異なります。
近視の人の場合
近視の人はまず、遠く用メガネの度数を弱めてみることを検討しましょう。
遠くがはっきり見えるメガネほど、近くを見るときにピントを合わせる力(調節力)を必要とします。
遠くの度数を弱めると、そのぶん近くを見るときに使う力が減り、だいぶ楽に見えるようになりますよ。
たとえば、今のメガネで1.2見えているなら、少し度数を弱めて1.0くらい見えるようにするだけで、かなり違いを感じられます。
トラックドライバーとか趣味がゴルフとかでない限り、日常生活で1.2の視力はあまりいらないんですよね。
とくにスマホやパソコンを使う時間が長い人は、遠くの見え方を少し弱めても生活に支障はありません。
なにがなんでも遠くがはっきり見えないとイヤ!という人は、もうしばらく我慢するか(我慢しても解決しませんが)、遠近両用メガネを始めてみましょう
遠視の人の場合
遠視の人の場合は近視とはまったく別で、目が疲れだしたらすぐに老眼鏡を使った方がいいでしょう。
早ければ30代前半くらいから眼精疲労を感じ始めますが、まさか老眼が始まっているとは思っていません。
そのため、理由もわからず慢性的な疲労を抱えてしまいます。
遠くはとてもよく見える人で、「最近どうにも目が疲れるな…」という人は遠視+老眼の可能性が高いです。
めんどくさがらず眼鏡店に相談してみましょう。
老眼鏡を買い替えるタイミングとは
老眼鏡は2~3年に1回は作り替えが必要です。
老眼は60歳くらいになるまでは進みます。
とくに40代から50代半ばにかけては一番進むので、3年前の老眼鏡となると結構ずれてしまっていますね。
高級な老眼鏡ではなくてかまいません。
その都度、自分に合った同数に作り替えていくのがベストです。
既製品の老眼鏡が合う人は限られている
結論から言うと、既製品の老眼鏡が合うのは、
年齢にもよりますが、視力の左右差のない
- 弱い近視の人(裸眼視力0.4~0.9くらい※)
- 弱い遠視の人(遠くがよく見える人)
だけです。
※視力値はあくまで目安です
コンタクトレンズをつけている近視の人も対象です
そこそこ以上の近視の人、それなりの遠視の人、乱視の強い人は、厳密に言えば「既製老眼鏡の対象外」です。
- そこそこ以上の近視の人→裸眼の方が見やすい
- それなりの遠視の人→既製品の製作範囲以上の度数が必要
- 乱視の強い人→きちんと測ったメガネでないとはっきり見えない
「最近老眼かな~?」と思って100円ショップの老眼鏡を試しても、人によっては「全然見やすくならない」ことがあるというわけです。
【目的別】老眼鏡はどこで買うべき?
老眼鏡を買える場所は3つあります。
- 眼鏡店/眼科で測って買う
- 100円ショップ/雑貨店で既製品を買う
- オンラインで既製品またはメガネの処方箋で買う
どこで老眼鏡を買うかは、
- なにを
- どのくらいの時間
- 何のために見たいか
によって変わります。
眼鏡屋で買った方がいい場合
- 長時間の読書で使う
- 新聞の株価欄を見るときに使う
- パソコン作業のときに使う
- 裁縫やビーズアクセサリーを作るときに使う
- 図面を引くときに使う
- 検品で使う
眼鏡店や眼科できちんと測って、眼鏡店(実店舗)で購入する方法です。
メリットは、視力の左右差に対応し、用途別に細かく度数を調整できること。
既製品は0.5きざみの度数しかありませんが、ちゃんとしたメガネは0.25きざみです。
完全オーダーメイドなので、長時間使っても疲れにくく、フィッティングのチェックやフレームの保証など、アフターケアも充実しています。
デメリットは、安い既製品よりコストがかかること。
とはいえ、かつてに比べて測って作るメガネもだいぶ安くなりましたが。
仕事や趣味で、長時間、しっかり見たいときはきちんと測って眼鏡店で作りましょう。
100円ショップ/雑貨店でじゅうぶんな場合
- キッチンで使う
- 持ち歩いて物を書く時だけ使う
- 予備としてあちこちに置いておきたい
- 多少見づらくても裸眼よりマシ程度でいい
- 老眼鏡にお金を掛けたくない
100円ショップや雑貨店でも老眼鏡は売られています。
メリットは圧倒的な安さ、手軽さ。
複数買っても大した出費にならないため、家のあちこちに置いておけるし、うっかり失くしても気にしなくて済みます。
デメリットは、「安かろう悪かろう」で質を求めてはいけないこと。
最低限の品質なので、ちょっと使う分には重宝しますが、長時間使うと体調が悪くなることがあります。
それでも「出来合いの安い老眼鏡でじゅうぶんよ」と考えている人はけっこういます。
それで快適に生活できているなら、たしかに100円以上の価値はあると思いますね。
老眼鏡は自分の感覚が大事。ストレスなく見えているなら100円でも価値はあります
オンラインで買う場合
- 雑貨店よりコストをかけても眼鏡屋より安く買いたい
- ネットでしか買えない高機能な老眼鏡を使いたい
最近ではオンラインで買えるメガネも増えてきました。
ショップによりますが、
- オンラインで既製の老眼鏡を買う方法
- メガネ度数を手入力し、自分に合った度数のメガネを買う方法
の2通りあります。
オンラインで度数入りのメガネを買う場合は、できれば実店舗があるショップにしてください!
メガネにはフィッティング(かけ心地の調整)が必要です。
実店舗がないオンラインショップは、一連の責任を放棄していると考えています。 (「フィッティングはお近くの眼鏡屋さんで」など)
オンラインや通販サイトで購入できるメガネは、雑貨店で買うものよりはデザイン性も高く機能的なものが多いです。
わざわざ眼鏡屋に行くほどじゃないけど、雑貨店よりはいい老眼鏡を買いたい、という人におすすめ。
デメリットは、どんなに高機能で、UVカット入りでも、ブルーライトカット付きでも、既製品の域は出ないこと。
高額な既製老眼鏡を買うくらいなら、眼鏡屋で測って一番安いメガネを買った方がお得なこともあります。
既製の老眼鏡の選び方
老眼鏡は、
- 年齢
- 見たい距離
で選ぶ度数が変わります。
度数の目安で選ぶ方法
見たい距離→ | 25cm | 33cm | 40cm |
40歳~ | +2.00 | +1.00 | +0.50 |
45歳~ | +2.50 | +1.50 | +1.00 |
50歳~ | +3.00 | +2.00 | +1.50 |
55歳~ | +3.50 | +2.50 | +2.00 |
60歳~ | +4.00 | +3.00 | +2.50 |
上の表はあくまで目安として参考にしてください。
年齢と見たい距離が交わっている度数、もしくはひとつ弱い度数がいいでしょう。
理由は、弱い方が慣れやすいのと、実際に私が眼鏡処方をしてきて、上の表より弱めでも快適に使えている人が多いと感じているからです。
(もちろん個人差はありますよ!)
たとえば45歳で33㎝の距離のものが見たければ、「+1.50」か「+1.00」の度数を選ぶといいですね。
「今後のことを考えて、あえて強めの度数を選ぶ」のはやめた方がいいです。高確率で使いづらいはずです
100円ショップで試してから買う方法
100円ショップの安い老眼鏡を店頭なり買うなりして、ざっと見た感じを試してから、もっといい老眼鏡をネットで買うのもアリです。
試しに買った老眼鏡は予備として取っておけばいいし、まったく使えない度数なら破棄すればいいだけ。
SDGs(持続可能な開発目標)に反していると言われればそれまでですが、資源のことを考えるなら、日常的に解決すべきことの方が多いのではと思います。
視能訓練士がおすすめする老眼鏡
視能訓練士である私が、実際に見たり調べたりして「これはいいな」と思う老眼鏡を紹介します。
眼科的にも個人的にも、メガネはきちんと測って作ったほうがいいというスタンスは変わりません。
しかし、「すべての人がきちんと検査をして老眼鏡を作らなければいけない」必然性はないと思っています。
用途や経済的理由など、人によって事情が違うからです。
一方で、既製の老眼鏡を選ぶ際には留意してほしいことがあります。
- 鮮明さ、耐久性は求めないこと
- 長期間、長時間の使用は不向きなこと
- ぴったり合うと期待しないこと
傷みやすいとか壊れやすいとか、それは仕方ないと思いましょう。だって既製品なんだもの。
どんなに高性能で、どんなに高機能でも、きちんと測って作るメガネに勝るものはありません。
JINS Switch READING
「きちんと測って作るメガネに勝るものはない」と言った手前アレなんですが、JINSのSwitch READINGシリーズには驚かされました。
普通の遠用メガネに、老眼鏡のレンズがマグネットでくっつくようにできています。
ベースとなる遠用メガネはきちんと測った度数のレンズが入っているため、老眼鏡のレンズをくっつければ、近視、遠視、乱視問わずだれでも鮮明に近くが見えます。
レンズを重ね掛けしている違和感はあるかもしれませんが、画期的!
価格は8800円ですが、遠用メガネと老眼鏡のセットなのでかなりお得でしょう。
着脱式の老眼鏡度数は+1.0~2.0までなので、対象は50代前半くらいまでの人ですね。
( +2.5以上を製作していないのは、度が強くなるほどレンズも重くなり、外れやすくなるからかもしれません)
Clic Readers
一見ふつうの老眼鏡ですが、左右のレンズのフレームがマグネットでつながっているため、分離させればイヤホンみたいに首から掛けられます。
つまり、失くしにくい!
さらに、耳にかける部分は奥行きを調整できるので、きゅうくつだったりブカブカだったりすることがありません。
13色展開でカラーバリエーションも豊富。
私の勤務先の患者さんで使っている人がいますが、なかなか見た目もおしゃれですね。
デメリットとしては、人によってはずり落ちやすい点。
鼻パッドを別に買ってつけるか、眼鏡店に持ち込んで相談しましょう。
眼鏡屋さんに相談するなら、鼻パッドも眼鏡屋さんで買った方がいいと思います
純日本製 やわらかシニアグラスSABAE
メガネの産地、鯖江産の既製老眼鏡です。
とにかく、軽くてやわらかいのが特徴で、メガネをしていることが気にならないくらいのかけ心地。
フレーム素材のTR90は耐熱性にも優れた樹脂で、見た目に反してかなり丈夫です。
国産の安心感もさることながら、価格もそれほど高くないので1本は試してみたい逸品です
性能、レビューを見る限りそれほど欠点もなさそうですが、国産フレームへの期待値の高さからか、レンズの品質が気になる人もいるようです。
まとめ
老眼鏡をかけ始めたから老眼が進むことはありません。むしろ、老眼鏡は目や体の疲れを癒し、快適な生活を送るのに必要なアイテムです。
長時間、しっかりと物を見たいときは眼鏡屋や眼科で測ってもらいましょう。
また、安い既製品の老眼鏡を頭ごなしに「NG!」と言うつもりもありません。
百均でじゅうぶん満足できている人もいるからです。
大事なのは、どんな老眼鏡でもストレスなくラクに使えているか、なのです。
今回の記事を老眼鏡選びの参考にしていただき、迷うようなら遠慮なく眼鏡店や眼科に相談してくださいね。