視能訓練士に興味あるけど、調べるとなんだかネガティブなことばかり。
どこまでが本当なの?そんなきつかったらついていけないかも…
と、心が揺れている方のために、視能訓練士歴9年目の私が一通りの問題点を洗い出します。
今回は私が経験してきた中で、視能訓練士が抱える問題の改善点や成功するコツなどをお話しします。
あくまで個人の意見ですので、これがすべてではありません。
とはいえ視能訓練士に興味があるなら、早い段階で「どうやってキャリアップしていくか」を考えた方がいいです。
この記事があなたの選択肢を広げることを願って。
私の経歴はこちら
- 社会人経験後に視能訓練士へ
- 転職経験3回
- 斜視弱視訓練、硝子体手術など
- 好きな検査は斜視、プリズム眼鏡処方、GP
- 3級FP技能士
- 世界遺産検定2級
- 普通自動二輪免許
- ライター
- メディア運営
- 所持眼鏡最大12本(今9本)
好きな眼鏡はBJクラシックcollection
「視能訓練士はやめた方がいいのか」の結論
「目に関する仕事がしたい」と思うならやめないでください。
しかし!
「合格率も高いし、医療職って安定してそうだし、視力検査とか簡単そうだし、視能訓練士いいじゃん♪」
と考えているなら、ちょっと考え直した方がいいかも。
医師との折り合いが悪い、作業量の割に給料が安い、人間関係がきついといった現実もあります。
視能訓練士は医師の手足となって行うリハビリ業務がメイン。
かといって「いいえ、私は視能訓練士に命かけるつもりです!!」という熱血な人も要注意。
休日の学会参加や、終業後の勉強会にプライベートの時間までけずることになるでしょう。
(熱量は大事ですが過労には気をつけて!)
ですが、視能訓練士を「やめとけ」とは言いません。
目的意識をもって取り組めば成功できます。
視能訓練士で成功するには、
- 最初の勤務先選び
- 転職前提のスキルアップ
- 他院でアルバイト(副業)
- 良好な人間関係の構築
が大切です。
ちなみに…
私は目と眼鏡について深く知りたかったので迷わず視能訓練士を選びましたが、もし過去に戻れるなら、絶対に看護師を選んでいます。
看護師は最強。
汎用性が高く、どこでも通用する最強の医療資格ですから。
視能訓練士か看護師かで迷うくらいなら絶対に看護師をおすすめします
視能訓練士は「つらい…」と言われる理由
では、ネット上の「視能訓練士はやめとけ」な理由を解説します。
ちなみに以下の理由は、すべて事実です。
私自身が経験しているからですね
事実だからこそ、「もういやだ」「やめた方がいい」と思う人がいるのです。
認知度低すぎ!
視能訓練士は認知度が低すぎる、激マイナー職です。
どのくらいマイナーかと言うと、申込用紙やアンケートなどの職業選択欄にまず出てきません。
「臨床検査技師」「放射線技師」「言語聴覚士」「理学療法士」…ちょうどこの辺にいるはずなのに、まずいません。
「視能訓練士?何する人?視力検査??…眼鏡屋のアルバイトでもできるじゃん」
↑こう言われたら(言われなくても思われている)、イチから説明しないと理解されない職種です。
実際、最近の検査機器はとても発達してきていて、何の知識もない人でも、ボタンひとつでかなり精度の高い検査結果を得られるようになっています。
自ら勉強してステップアップをしていかない視能訓練士は、近い将来器械に淘汰されるでしょう。
公私は分けつつ、しかしある程度は意欲的に学ぼうとしなければスキルアップはできません。このバランス感覚が難しいところです
女社会…
視能訓練士は8割以上が女性なので、必然的に女社会になります。
つまり、女性特有の人間関係をうまく築く必要があるということ。
やるべきことは、とにかく相手の土俵に乗らないことです。
「聞こえない」「関係ない」「もったいない」の「3ない精神」が大事です。
陰口や噂話は「聞こえない」んです。
仕事に関わらないことは「関係ない」んです。
媚びたりおだてたりする時間が「もったいない」んです。
女社会で生き抜く必要があるからといって、
- おだてる
- ほめ合う
- 悪口に加担する
以上のことは不要です。
私は上のどれもせずサバイブしてきました。
余計なことに首をつっこまず、きちんとお礼を言い、ミスしたら率先して詫びる。これだけでわりとやっていけます。
女性同士の人間関係に疲れたときにおすすめの本
女社会…②
女社会であることを理由に視能訓練士を「やめとけ」というのはちがいますよ。
かつての勤務先では、うわさ話や陰口、医者の寵愛(ちょうあい)の奪い合いが横行し、かなりドロドロしていました…。
「女は感情的だから」「女は非論理的だ」は、脳の構造的には事実かもしれない。
女社会特有の空気感があるのも事実だ。
しかし、「女社会だからやめとけ」は関係ありません。
なぜなら…
男性視能訓練士が主任でも、ろくでもない人がいるからです。
自分は働かずいつもいない、有給休暇を取るのに粘着質なイヤミばかり、医師には媚びる…
って、やってること「女社会」と同じじゃん!!
ということで、もうわかりますよね?
問題は「女社会」ではなく、能力のない人のもとで働かされることなんです。
「女社会だからやめとけ」というのは、女社会であることと能力不足であることが混ざってしまった評価ではないか、と考えています。
相対的に女性が多いため、リーダーの能力不足をまるで「女であること」が原因かのようにとらえてしまうんですね。
男性は苦労する
視能訓練士の男性はやや不利なのも事実です。
理由は、
- 子供には女性の方が受けがいいから
- 圧倒的多数の女性視能訓練士に気に入られる必要があるから
小学校に入る前、または小学校低学年の(特に)女の子は、男性検査員より女性検査員の方に心を開きやすいです。
私もこれまで勤務してきた中で、何度も「検査は女性ORTで(ORT:視能訓練士のこと)」と書かれたカルテを見てきました。
しかし、時には「男性ORTで」と書いてあることもあるんです!
ふざけだす、調子に乗りやすい、女性だと甘えてしまう、このような(特に)男の子には男性視能訓練士が大活躍!
数で言えば男性は不利ですが、男性ならではの活躍の場があることは忘れないでください。
「男社会で女性が生き抜く」のと同じくらい、「女社会で男性が生き抜く」のは大変です。
女性の視能訓練士とバチバチ火花を散らしても、圧倒的少数派なので援護射撃に期待ができません。
媚びる必要はありませんが、女性リーダーとうまくやっていける柔軟な思考ができる男性向きの仕事ですね。
媚びないとうまくいかない関係の職場は、そもそも腐敗しています。スキルだけ磨いてさっさと転職しましょう
上下社会
医療業界全般がどうか知りませんが、視能訓練士の世界は上下関係が厳しいです。
大学病院や大規模クリニックなど、歴史の古い職場では特に感じました。
実際、視能訓練士の養成校では教員から「上下関係だけはしっかりね」と何度も言われていました。
私は社会人を経験しているので、視能訓練士になった時点でだいぶ年を食っていました。なので、なおさら上下関係には気を使いましたね
新卒のころはわかりませんでしたが、中堅になった今、わかったことがあります。
それが「いきがってた(?)先輩は先輩で、なめられないように必死だったんだろうなぁ」ってこと。
上下関係が悪いわけではありません。
尊敬できる人のもとで自らスキルアップできる、そんな上下関係なら大歓迎です。
転職した現在は、私が一番年上でキャリアもありますが、上下関係ほぼゼロ。
無理に上下関係を作らなくても、全員がお互いを尊敬し合い、責任感を持って働いているからです。
誰しもそんな職場で働けたらいいんですけどね。
汎用性が低い(つぶしが利きにくい)
残念ながら、視能訓練士は眼科でしか役に立ちません。
(言っちゃった…でもわかってたよね?)
視能訓練士の転職先を考えてみたんですが、
- 眼鏡屋
- 視能訓練士養成校などの講師
- 医療ライター(と言っても需要少なめ)
くらいしか思い浮かびませんでした。
くやしい…
国家資格ですから、全国の眼科どこへでも勤め先はあります。
しかしながら、昨今のコロナ禍で眼科は「緊急性の低い科」と認知されており、大学病院でも手術の延期や中止などが相次ぎました。
さらに財政事情かなにかで、市立病院の眼科が閉鎖されることも珍しくありません。
視能訓練士は眼科に特化した専門家。
- 検査機器の発達による将来性の不安
- 相次ぐ眼科の閉鎖
などの事情を考えると、視能訓練士一本で行くより、少し視野を広げてもいいと思います。
患者さんに当たられる
ご機嫌ななめの患者さんや認知機能が低下した患者さんに当たられることがしばしばあります。
内科や耳鼻科などと違い、
受付→検査→診察
なので、医師(診察)にたどり着く前に「検査」が怒りのはけ口となることがあります。
「なんで毎回この検査をするんだ!」
「最近も別の病院でやった!」
「紹介状があるのになぜ同じ検査をやるんだ!」
などと言われます。
ケンカにならないよう、スムーズな検査を進めるためのコミュ力と忍耐力も求められますね。
が、あまりにわがままな患者さんには厳しく接することもありますよ。ほかの患者さんに不利益を与えるような場合は特に。
施設によりやりがいに差がある
施設の設備や医師の考え方により、視能訓練士に与えられる権限がまるで違います。
すべての検査の指示を医師が出すこともあれば、最低限の指示以外は視能訓練士に任されることもある。
視力と眼圧の検査しかない眼科もあれば、あらゆる機器がそろっている眼科もある。
視能訓練士のやりがいは、状況を判断し、自分で検査や訓練の内容を組み立てること。
やりがいが持てるかどうかは、設備がどれだけ整っているか、医師にどれだけ任されているかによります。
検査を組み立て、時間をかけて保護者と相談し、子どもの初メガネを処方しても、診察で「まだメガネはいらないよ」と医師に言われたら、かけた時間のすべてが無駄になります。
だから、最初の就職先がとても重要なんです
視能訓練士で後悔しないコツ
「視能訓練士で成功する」定義はなんだろうかと考えた結果、このようになりました。
- 平均年収と同等(以上)
- やりたい検査ができる
- 人間関係が悪くない
私は現在、3つともそれなりにクリアしているので成功している自覚があります。
視能訓練士で成功するには、
- 最初の勤務先選び
- 転職前提のスキルアップ
- 他院でアルバイト(副業)
- 良好な人間関係の構築
が大切です。
特に、最初の勤め先に大きく影響を受けます
最初の就職先が大事
成功するために何より大事なのは、新卒後、最初の就職先です。
優先すべきは業務内容。
視能訓練士としてどれだけたくさんの検査ができるか(やらせてもらえるか)が、転職後の成功ルートにつながります。
私の最初の職場は、地域でも大規模なクリニックで、斜視弱視から手術に必要な検査まで、大学病院レベルのあらゆる検査機器がそろっていました。
人間関係はヒドイものでしたが、3年間修業。
おかげさまで「ある程度何でもできる」視能訓練士になり、転職にとても有利でした。
人間関係は一時的なもの、スキルは一生モノと割り切るのです
転職前提でスキルアップ
視能訓練士は転職してこそレベルアップすると考えています。
もし勤務先に不満があるのなら、ちょっと言葉は悪いですが、最初の就職先は目を養い、技術を上げるための「踏み台」と割り切るべきです。
1件目の就職先が素晴らしかったとしても、ひとつの場所でずっと働いていると、視野が狭くなり独善的になりがち。
情報のアップデートもできず、技量が落ちていることにも気づかず、サル山の大将になりかねません。
柔軟な思考を持ち、たくさんのフィードバックを活かし、技量を上げていくのが視能訓練士の課題です。
そのためには転職や、次に紹介する他院でのアルバイト(副業)も視野に入れてみて下さい。
最近ではContactキャリアという新しい視能訓練士に特化した求人サイトが登場しています。
可能であればアルバイトをする
副業禁止だとNGですが、可能であればほかの眼科に週1や月2でもアルバイトに行くといいです。
休みは1日減ってしまいますが、無給でやりがい搾取(さくしゅ)されるわけではありません。
- ほかの眼科を知ると、知見が広がる
- さらに技術が上がる
- 相談できる人が増える
他院を知り、他院のいいところをまねることで、結果的に自分のクリニックへいい影響が出ます。
私は手術メインのクリニックに努めながら、許可を得て斜視弱視専門の小児眼科へアルバイトに行っていました。
バイト先で学んだこと、得た技術は自分のクリニックでも大活躍。
自信にもつながるし、メリットだらけでした。
バイト先の先輩も大変優秀な方で、いろいろと相談できる相手が増えるのもありがたいことでした。
眠くなる勉強会よりは他院でアルバイトした方がよほどいいと思います。
私は8割眠くなっちゃうので…
人間関係の再構築をする
フラットな人間関係から始めたいなら、新規開院のクリニックに就職・転職も選択肢のひとつ。
理由は、ゼロからの人間関係を構築しやすいからです。
私が新規開院の眼科で泥沼人間関係から抜け出せたので!
また、最初の就職先でスキルをしっかり磨いていれば、チームワークを維持しつつ、やりやすいように検査の流れを設定できるのもメリット。
ただしリスクもありますよ。
「頼れる先輩がいない」「すでにお局的存在がいる」、なにより「患者さん来なくて経営がヤバい」というリスクが!
しかし、みんなで協力して病院を大きくしていこう!という精神的なつながりは、なかなか頼もしいものですよ。
経営が軌道に乗るまでは冷や冷やしますけどね。
転職するなら【人間性、社会人経験】を重視して求人をしている眼科もおすすめです!
まとめ
「視能訓練士はやめとけ」と言う口コミを見ると、確かにその不遇さは目に余ります。
もっと重宝されてもいいと思います。
周囲からの冷たい視線に心が折れそうなことは何度もあるでしょう。
しかし!!
卑屈(ひくつ)になるのはまだ早い。
子どもの斜視・弱視訓練ができるのは視能訓練士だけですよ。
こればかりは看護師や眼鏡屋さんもできません。不遜(ふそん)な言い方をすれば、医師よりも視能訓練士の方ができると思うのです
目的意識を持ち、そこそこの人間関係を維持し、スキルアップした上で転職できれば、成功がぐっと近づきます。
挑戦してみなければわからない!
参考資料