若いころから目がいいのが自慢だったのに、もうすぐ50歳を迎える今、老眼鏡がないと近くが全然見えない。
でも、友人に言わせると「老眼鏡なんか必要ない」なんて。
どういうことコレ!?なんで私だけ?ヽ(`Д´)ノ
なんだか自分だけ年をとった気がして、グサッと来ることありますよね。
でも、安心してください!
あなただけが老眼になったわけではないのです。
この記事では、
- なぜ老眼鏡がいらない人がいるのか
- 老眼にならない人は本当にいるのか
というモヤモヤを、眼科検査のプロである視能訓練士がやさしく解説します。
結論 老眼にならない人はいない
もう見出しから答えが出ていますが、老眼にならない人はいません。
老眼とは、ピント合わせの力(調節力)が衰えて、近くを見るときに焦点が合わない目のこと。
「老眼になったら老眼鏡を使う必要がある」と思い込んでいませんか?
ちょっと盲点なのですが、「老眼でも老眼鏡がいらない人がいる」という事実があります。
「老眼には老眼鏡が必要だ」だから「老眼鏡をかけていない人は老眼ではない」というロジックは誤り
老眼鏡がなくても近くが見える理由
あなたは「私は老眼鏡がないと見えないのに、なぜあの人は見えるの?(ずるい)」と、はがゆい思いをしているかもしれませんね。
老眼鏡がなくても近くが見えるのには理由があります。
- 近視だから
- 乱視が強いから
- 白内障が始まっているから
近くを見る時は焦点が目の後ろにずれるので、水晶体をふくらませて網膜上に焦点が来るよう「調節」します。
しかし、年を取ると水晶体が硬くなり、自由自在にふくらんでくれません。
調節ができなくなるのです。
つまり老眼になるということです。
この現象はすべての人に平等に訪れます
近視だから
老眼鏡なしでも近くが見えるのは近視だから、というのが最も多い理由です。
近視だとなぜ老眼鏡なしに近くが見えるのか、次の図をご覧ください。
どんな人でも近くを見る時、焦点は網膜の後ろにずれます。
しかし近視の人は、もともとの焦点が網膜の前にあるため、焦点が後ろへずれると、勝手に近くが見えてしまいます。
近くを見るための努力は必要ありません。
「ずるい!」と思いますか?
でも近視の人はメガネがないと遠くが見えません。
乱視が強いから
乱視が強い人も近視の場合と似ていて、近くを見る時に焦点が網膜のそばに来るため、老眼鏡がなくてもそれなりに見えてしまうことがあります。
ただし乱視はかなり複雑なメカニズムがあり、一概には言えません。
一般的には「近視だから近くが見える」方が圧倒的に多いはずです。
白内障が始まっているから
白内障が始まると、目が近視化することがあります。
白内障とは水晶体が濁り、水晶体の厚みが増し、かすみやまぶしさを訴える病気のこと。
近視化すると、近眼と同じように近くに焦点が合いやすくなります
「最近、老眼鏡かけなくても近くが見えるようになった」と言う人がいて、実は白内障だったということがありました。
こういう人は「逆に遠くはかすんで見えなくなったけど」と言います。
老眼鏡なしで近くが見える人の中には、白内障などの眼疾患が原因で、一時的に近視化している可能性もゼロではありません。
なぜあなたには老眼鏡が必要なのか
「老眼鏡なしで近くが見える理屈はわかったけど、なんで私は老眼鏡がないと見えないの?」
という疑問に答えます。
あなたが老眼鏡なしで近くが見えないのは、
- 遠視/正視だから
- 弱い近視だから
- レーシックをしたから
のいずれかであるはずです。
遠視/正視だから
遠視または正視で、若いころ目が良かった人は老眼鏡が必要です。
遠視と正視は違いますが、今回はわかりやすくするため、どちらも遠視とします。
遠視で老眼の人が、老眼鏡がないと近くが見えない理由は、次の図を見てください。
焦点が網膜の前にある近視と違い、焦点が網膜の後ろにあるのが遠視です。
近くを見る時、焦点はさらに後ろにずれてしまうため、水晶体をふくらませないと(がんばらないと)焦点が合いません。
しかし、老眼になるとがんばっても水晶体がふくらまなくなります。
これ以上がんばりようがないので、老眼鏡の助けが必要なんですね。
遠視の人は遠くが見えていた分、近くはメガネがないと見えない。近視の人と逆ですね。
弱い近視だから
昔は目が悪かったけど年取ったら遠くが見えるようになった
免許更新にメガネがいらなくなった
このような人は、もともとが弱い近視だった可能性があります。
結果的に、弱い近視だった人は遠くを見る時に焦点が網膜のそばに来て、近くを見る時に焦点が網膜の後ろに来ることに。
簡単に言うと、弱い近視の人が近くを見る時は、遠視の人が近くを見る時と同じ状態になるというわけです。
近視でも近くを見る時に老眼鏡が必要な人はいる、ということですね。
レーシックをしたから
レーシックをした人も、老眼鏡がないと近くは見えません。
ド近眼だった人も、レーシックをして遠くが見えるようにすれば、正視(目のいい人)と同じ条件になりますよね。
レーシックをして年を取ってから近くが見えなくなるのは、遠視と同じメカニズム。
老眼鏡は必要になります。
ただしレーシック後に近視が戻ってきた人は別です。
老眼になりやすい人はいるの?
老眼を自覚しやすい人/なりやすい人はいます。
老眼を早く自覚する人
- 遠視の人
- 目を酷使している人
- 紫外線を浴びやすい人
遠視の人
遠視の人は30歳前後で老眼の前兆を自覚することもあります。
「最近、近くを見るのに疲れちゃって、つい目を閉じてしまう」と言う29歳の患者さんがいました。
調べてみると、彼女は弱い遠視。出産後、子育てで疲労がたまることが多く、以前より調節力が落ちたようです。
40代でも老眼を自覚しやすいのは遠視(または正視)の人で、同世代の近視の人より早く老眼鏡が必要になるでしょう。
目を酷使している人
加齢による老眼+近業によるデジタル機器老眼(スマホ老眼)のダブルアタックで、年齢のわりに老眼を自覚しやすい人もいます。
目を酷使すると毛様体筋がこり固まり、若い人でさえ手元が見えにくくなります。
目の使い過ぎとは、たとえば長時間のパソコン作業やスマホいじりのほか、細かい目盛りを読んだり、数字を見分けたりする検品作業などですね。
そこへ年齢による老眼が加われば、目が疲れにくい生活をしている同世代より老眼を自覚しやすくなります。
紫外線を浴びやすい人
老眼は水晶体が硬くなって起こる症状ですが、その理由の一つとして「紫外線」が挙げられます。
加齢変化に加えて紫外線(100㎚~380㎚のうち特に280㎚~320㎚の波長)も危険因子の1つとされる。
引用:『標準眼科学』
紫外線を受けて増える「活性酸素」が水晶体の硬化を早める原因の一つと考えられています。
紫外線は白内障や加齢黄斑変性症など、ほかの疾患の要因にもなるため、いずれにしてもケアはしておくべきでしょう。
最近の眼鏡はほとんどがUVカット付きのレンズですし、コンタクトレンズもUVカット付きのものを選ぶといいですね 。
よく誤解されますが、レンズに色が入っているのと紫外線カットは別のことです。「無色透明のレンズ」でも紫外線カットは入ってますよ。
老眼鏡をかけずに済む方法ってあるの?
できれば老眼鏡なんてかけたくない…
老眼鏡が必要とはわかっていても、使わずに済むならその方がいいですよね。
でも老眼鏡ゼロの生活なんてできるんでしょうか…
できます。
「うさんくさい商品を売りつけようとしてるんじゃないか」と疑われそうですが、どれも正攻法です。
遠近両用メガネ
老眼鏡をかけずに済ませたいなら、遠近両用メガネを選択すれば解決します。
「いや、メガネかけたくないんだよ!」というお気持ちはさておき。
…怒らないでください。少なくとも老眼鏡はかけずに済みます。
いかにも老眼鏡といったデザインではないので、だれが見ても「ただのメガネ」にしか見えません。
ただし、注意したい点もあります。
遠近両用メガネは基本的にかけっぱなしのメガネ。
若いころからメガネをかけて生活する習慣がなかった遠視の人によって、慣れないうちはかなりストレスになります。
慣れない→かけたくない→かけない→慣れない
という、永遠の悪循環に陥る可能性が大。
遠近両用メガネを始めるには、「人にすすめられたから」ではなく「自らかけたいと思ったから」という、しっかりした動機があったほうがいいです。
遠近両用メガネに興味があるなら、少しでも体が若いうちに始めるのがおすすめ。50代半ばすぎてからだと遠近レンズの特性に体がついていけません。
遠近両用コンタクトレンズ
コンタクトレンズに遠近両用があるのを知らない人はけっこういて、「ありますよ」と伝えるとよく驚かれます。
遠近両用コンタクトは、遠くから近くまでがそれなりに見やすくなるアイテムで、老眼鏡をかけずに近くがそれなりに見えるようになります。
デメリットは、
- あくまでそれなりの見え方でしかない
- 若いころと同じように遠近が見えるわけではない
このため、運転や長時間近くを見る作業には向きません。
さらに「遠近両用コンタクトなんて素敵すぎる!」という期待値の高さによって、「思っていたより全然見えない」とがっかりするケースも後を絶ちません。
遠近両用コンタクトは、「それなりでもいいから今より楽に見たい」と思っている人に向いています。
老眼治療の手術
自由診療になりますが、「屈折矯正手術」と呼ばれる老眼治療があります。
- 遠近両用レーシック:角膜をけずって遠~近まで見えるようにする手術
- 遠近両用ICL:目の中に多焦点の眼内コンタクトレンズを入れる手術
- 角膜内リング:角膜の中に小さな穴の開いたプレートを入れる手術
すごい時代になりましたよね。
老眼鏡をかけずに済むのは間違いないでしょう。
しかし老眼治療の手術にはデメリットもあります。
- 誰でもできるわけではない(適応があるかどうか)
- 全国どこでもできるわけではない
- 数十万円以上は軽く費用が掛かる
- 手術のリスクがある
以上の理由もあり、かなり人を選ぶのは事実。
費用をいくらかけてもいいから老眼鏡のない生活がしたい、という人に向いている方法ですね。
眼科に相談
眼科を受診して目の病気がないかを調べてみたところ、実は白内障で手術が必要になった…
というケースでは老眼鏡を回避できる可能性があります。
なぜ白内障手術で老眼鏡いらずに?
白内障手術では濁った水晶体を取りのぞき、人工のレンズ(眼内レンズ)を目の中に入れます。
眼内レンズの度数を、
- 近視にさせたり
- 多焦点眼内レンズにしたり
することで、老眼鏡なしで生活できるようになるのです。
ただし近視化させたら眼鏡がないと遠くは見えなくなります。一長一短ですね…
老眼は遅らせる効果はわずか
老眼を遅らせるトレーニングはありますが、効果があってもせいぜい数年が限界。
老眼の開始を46歳から48歳に遅らせたところで、その後の数十年はかならず老眼と共存します。
もちろん、サプリメントや食材で目の健康を保つ努力は推奨されるべきでしょう。
しかし「老眼を遅らせる」より「どうやって老眼と付き合っていくか」を考えた方が、建設的ではないでしょうか。
まとめ
一見すると老眼ではないように見える人でも、間違いなくあなたと同じ老眼になっています。
眼鏡なしで近くが見えるなんてうらやましいですよね。
でももしかしたらその人は、メガネがなくても遠くがよく見えるあなたをうらやましがっていたかもしれません。
老眼鏡をかけずに済ませたいなら、遠近両用メガネやコンタクトレンズを試してみるのがおすすめです。
ただし、どちらのなるべく若いうちにスタートしましょう。
長い付き合いになる老眼。ほんの少しでも受け入れると、快適な視生活を送れるようになりますよ。