コンタクトレンズをしたまま遠くから近くへ視線を移すと、ピントの切り替わりが遅くなったと感じませんか。
パソコン作業が多いとなかなかつらいところですよね。
コンタクトを取ればよく見えるのに、つけたままだと近くがぼやけて見えるのは、「老眼の始まり」かもしれません。
この記事では、コンタクトレンズを装用したまま遠くも近くも見る方法を紹介します。
視能訓練士の私が実際に提案している方法です
近視は近くが見えるから老眼にならない、という謎の認識が広まっていますが、それはまったくの誤解。
正しく対処して、手元のぼやけから解放されましょう。
コンタクトレンズで近くがぼやける原因
コンタクトを装用したまま近くを見るとぼやけるのには、いくつかの原因が考えられます。
- 老眼
- 度が強すぎる
- ドライアイがひどい
もっとも考えられるのは「老眼」。
「近くが見えにくくなる」のは40代に入れば誰もが経験する症状ですね。
老眼がそれほど影響していない年齢の場合、コンタクトレンズの度の入れ過ぎ(過矯正:かきょうせい)が考えられます。
過矯正は、
- 何年も前の度数をずっと使っている人
- 処方箋不要のネット通販で自分で度数を調整して買っている人
に見られます。
自分で度数を調整するのは絶対にやめましょう!
また、「ドライアイがひどい」など目に病気がある場合も見え方は悪くなります。
ただしこの場合は近くだけぼやけるといったことはあまりなく、視界全体がぼやけたり見えにくくなったりします。
ドライアイは不快感や痛みをともなうこともあるので、おかしいと思ったらすぐに眼科を受診してくださいね。
コンタクトレンズをしたまま遠くも近くも見る4つの方法
コンタクトレンズをしたままでも、やり方によってはメガネなしで遠くも近くも見える方法があります。
- 近くは弱いコンタクト 遠くはコンタクト+メガネ
- 遠くしっかり見えるコンタクト 近くはコンタクト+メガネ
- 片目は遠く 片目は近くに合わせる(モノビジョン)
- 遠近両用コンタクト
近くは弱いコンタクト 遠くは上からメガネ
コンタクトの度数を数段弱めることで遠くをはっきり見ることはあきらめ、焦点を近くに合わせる方法です。
40代半ばあたりまでなら、この方法で中間~近くを見ることができるため、メガネがいりません。
ただし40代後半以降になると、さらに遠くの見え方を犠牲にしないと手元が見えなくなります。
つまり、中間距離も見えなくなるくらい弱い度数のコンタクトにしないと、近くが見えないということ。
「じゃあ遠くはどうやって見るのよ!?」
というわけで、遠くを見る時はコンタクトの上から遠く用のメガネをかけると解決します。
弱いコンタクトで手元に焦点を合わせるやり方のメリットは、
どんなに強度近視の人でも、近視の大部分はコンタクトで矯正しているため、遠くを見るためにかける眼鏡のレンズが薄くて済むこと。
つまり、ド近眼のメガネ特有の
- 分厚いレンズ
- 目が小さく見える
というマイナス面をカバーできるのです。
デメリットは、「結局のところメガネは必要」というところですね。
個人的にはおすすめのやり方です
遠くはコンタクト 近くは上からメガネ
コンタクトレンズでバッチリ遠くがよく見えるようにして、近くを見る時は上から老眼鏡(リーディンググラス)を使う方法です。
メリットは遠くも近くも質を落とさずしっかり見えること。
一方、デメリットは近くを見る時に眼鏡をかけているので、「老眼鏡かけているイメージ」が付きやすいこと。
先ほどの「遠くはメガネ+コンタクト、近くはコンタクトのみ」のやり方と同じく、目に負担もかからず快適な見え方の質を担保できるので、かなりおすすめです。
しかしどうしてもメガネをかけたくない人にとっては軽くストレスかもしれません。
片目は遠く 片目は近くに合わせる(モノビジョン)
コンタクトをモノビジョンで合わせれば、メガネ不要の生活を送れます。
モノビジョンとは
- モノ(単、ひとつ)
- ビジョン(視界)
片目ずつ、それぞれ別に物を見るコンタクトレンズの処方方法のこと。
たとえば、右目は遠くにしっかり合わせたコンタクト、左目は手元に焦点が合うよう弱い度数(もしくは裸眼)のコンタクトを入れます。
そうすれば…
遠くを見るにしても近くを見るにしても、左右どちらかの目は必ず焦点が合っているため、完全にメガネなしで遠くも近くも見えるようになります。
遠近両用コンタクトを使用
遠近両用コンタクトは1枚のレンズの中に遠~近までの度数が交互に入っています(メーカーにより差はありますが、おおむね同じ)。
見え方の鮮明さは落ちますが、普通のコンタクトを使うより遠くの視力を維持したまま、手元も見やすくなります。
種類もどんどん増えてきているため、いくつか装用してみて自分に合ったものを選べる時代になりました。
改良点はありますが、選択肢が増えたのはいいことですよね。
まだ当分メガネをしたくない人はぜひ一度試してほしいと思います。
モノビジョンをねらう注意点
片目は遠く、片目は近くに合わせるモノビジョンという合わせ方ですが、注意したいことがあります。
注意点
- 立体感がなくなる
- 慣れるまで個人差がある
立体感がなくなる
モノビジョンにすると距離感がつかみにくくなります。
そもそも立体感は、
- 両目の視力が同じ程度
- 斜視がない
など、いくつもの条件をクリアして初めて獲得できる高度な機能。
左右の目の度数に差をつけるモノビジョンのやり方では、立体視を維持できなくなります。
慣れるまで個人差がある
右目と左目で見えるものの鮮明さが異なるため、脳は混乱します。
脳内で、「今は右目で遠くを見ている」「今は左目で近くを見ている」と意識的に切り替えて見る必要があります。
適応力の高い人は慣れられますが、人によってはかえってストレスになることも。
モノビジョンを試したものの、結局、両目の視力をそろえてメガネの併用をする人もいます。
モノビジョンはかなりクセがありますが、間違いなくメガネなしで遠くも近くも見える方法です。絶対メガネが嫌な人は試してみてもいいかも
遠近両用コンタクトの注意点
遠近両用コンタクトを検討中の方には注意点があります。
注意点
- ハッキリ見たい人には向かない
- 夜間の運転には適さない
ハッキリ見たい人には向かない
各メーカーさまざまな遠近両用コンタクトを製作していますが、どのコンタクトを使っても、若い頃と同じように遠くも近くも鮮明に見えることはありません。
遠近両用コンタクトは1枚のレンズに複雑に度数が入っている「多焦点(たしょうてん)」コンタクトレンズ。
焦点が複数あり、それぞれ見えた映像を脳内でえり分けて認識します。
脳内での選別作業に時間がかかるほか、見えた映像も細かくはっきりと識別できるわけではないため、期待値が高すぎるとガッカリすることになるでしょう。
特に普通のコンタクトレンズを使っている多くの人が「遠近両用コンタクト」と聞くと、
「遠近両用を使えば、眼鏡なしで遠くも近くも見えるんじゃないか」
と期待されます。
遠近両用コンタクトは「遠くも近くもそこそこ」見える程度と思ってください。
「普通のコンタクトよりマシなら試したい」くらいに思っておくと逆に満足度が上がります
夜間の運転には適さない
遠近両用コンタクトは特に夜間の運転をする人には向きません。
理由は、遠近両用コンタクトが瞳孔の大きさに影響を受けやすいからです。
瞳の役割
瞳孔は開く(散瞳:さんどう)と光を取り入れやすくなりますが、見え方の鮮明さが落ちます。
一方、縮む(縮瞳:しゅくどう)とやや暗くなりますが、物のピントが合いやすくなります。
夜間は誰でも瞳孔が開くため、ただでさえはっきり見えない遠近両用コンタクトの視力の質が下がります。
問題はそれだけではなく、暗闇と対向車のライトを交互に見ることで、
散瞳⇔縮瞳
の切り替わりが多く、瞳孔が開いたときは視界がにじみ、縮んだときは暗くなってしまうのです。
結果としてかなりの見えにくさを感じるため、遠近両用コンタクトで夜間の運転はしないようにしましょう。
ネット通販で近宅を買える時代ですが、特に遠近両用コンタクトは必ず眼科で処方してもらいましょう
まとめ
コンタクトをしたままだと近くがぼやけるのは老眼の可能性が高いです。
コンタクトを外さずに近くが見えるようになる対処方法としては、以下の4つのやり方があります。
- 近くは弱いコンタクト 遠くはコンタクト+メガネ
- 遠くしっかり見えるコンタクト 近くはコンタクト+メガネ
- 片目は遠く 片目は近くに合わせる(モノビジョン)
- 遠近両用コンタクト
①②は目や脳に負担なく視生活を送れますが、メガネとの併用は欠かせません。
③④は完全にメガネなしで生活できますが、見え方の質に慣れが必要です。
おすすめはメガネとの併用ですが、仕事内容や生活スタイルに合わせて合うやり方を選んでくださいね。