写真を見て「なんか斜視っぽい」と気づくことはありませんか?
もしくは知り合いに「斜視っぽくない?」と言われることは?
親切心だか好奇心だか知らないけれど、とうとつに言われたらショックですよね。
でも、大丈夫!
いきなりあせる必要はありません。
見た目が斜視っぽいからと言って斜視とは限らないからです。
斜視には「偽斜視(ぎしゃし)」と言って、
斜視っぽいけど斜視ではない
ことがあります。
斜視っぽくても斜視ではないので、視力や立体的にものを見る働きに影響はありません。
偽斜視には大きく分けて二つの原因があります。
- 骨格からきているもの
- 眼球の発達に原因があるもの
今回は「斜視っぽいけど斜視じゃない4つの外見」を紹介するので、ちょっとした知識の足しにしていただければ幸いです。
斜視っぽいけど斜視じゃない4つの原因
骨格や顔の作りが原因の偽斜視には、
- 内眼角贅皮
- 目の幅が狭い
- 白目の割合が違う
眼球の発達に原因がある偽斜視には、
- ガンマ角異常(黄斑偏位:おうはんへんい)
があります。
内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)
新生児に多い「斜視っぽい」代表は、「内眼角贅皮(ないがんかくぜいひ)」です。
目の目の間が平べったく、鼻もペタンとしていて、白目の内側を皮膚が覆ってしまっている状態です。
外見的に「内斜視っぽく」見えてしまうんですよね。
目の目の間の皮をつまむと白目が出てくるので、内斜視ではないことがわかりやすくなります。
もちろん検査ではつまむだけではなく、黒目に光を当ててきちんと中心が光っていることを確認し、「眼位は正常」と判定しますよ。
内眼角贅皮はアジア人に多いです。そういえば、欧米系の赤ちゃんって生まれてすぐなのに「仕上がってる」感ありますよね…
※乳児内斜視(本物の斜視)
乳児内斜視(先天性内斜視)は早急に治療が必要です。
しかし治療してもぴったり正常になることは少なく、両目で物を見る機能は発達しにくいと言われています。
「斜視っぽいかなぁ?」というより「コレはほんとにおかしい!」と気づくほど、内斜視の角度が大きい。
症例によっては黒目が隠れるくらい内側に寄ってしまうこともあります。
一方で乳児は視力がまだ良くないため、正常な目でも視線が左右バラバラに動いたり、視線がふらふらしたりします。
眼科あてに紹介状を出してくれるので、まずはかかりつけの内科に相談しましょう。
目の幅が狭い
年をとるとまぶたを持ち上げる筋力が弱くなり、目にかぶさるように垂れてきます。
眼瞼下垂(がんけんかすい)と言い、まぶたのたれ具合によっては斜視っぽく見えることも。
眼瞼下垂による「斜視っぽい」のは心配いりませんが、眼瞼下垂そのものが「加齢性なのか、ほかの疾患(重症筋無力症など)なのか」を確認する必要はあると思います。
ちなみに、今回は一例として「外斜視っぽい」図を載せましたが、片目の眼瞼下垂で「上斜視っぽく」見えることもあります。
- 片目はまっすぐ向いていますが、もう片目が上に向いている斜視のこと。
- 「下斜視」もある
- 上斜視と下斜視はセットだけど、「上斜視」だけ覚えておけばOK
白目の割合が左右で違う
骨格上、左右の白目の広さが違い、斜視っぽく見える人がいます。
鼻側の白目の割合が広く、耳側の割合が狭い人は外斜視っぽく見え、逆の人は内斜視っぽく見えます。
黒目に光を当てると、きちんと中心で反射します。
ガンマ角異常(黄斑偏位:おうはんへんい)
「ガンマ角」なんて、カッコイイんだかブキミなんだかわからない言葉ですが、簡単に言うと
生まれつき、視線の向きと光の入る角度が違う目のこと。
網膜にある、光をキャッチする「黄斑(おうはん)」という部分がちょっとズレているんですね。
強度近視の人や未熟児網膜症にともなうこともあれば、特に何も問題がなくても生まれつきズレている人もいます。
黒目に光を当てると、光の反射は鼻側か耳側にズレています(上図参照)
未熟児網膜症や家族制滲出性硝子体網膜症などにより黄斑が牽引され偏位すると、視線がそれるため、見かけ上の斜視、つまり偽斜視を呈する。
黄斑が耳側に偏位すれば、陽性γ角異常、鼻側に偏位すれば陰性γ角異常と言い、これらは見た目に眼位がずれていても、実際には視線は同一方向を向いているので複視はない。
引用: 日本視能矯正学会『黄斑偏位を伴う大角度の外斜視に対し斜視手術を施行した一例』
確かに斜視っぽいのですが、斜視の検査をしても目の位置はズレておらず、物を立体的に見る力もしっかり備わっています。
斜視っぽいと思ったら眼科に行こう!
「斜視っぽい」のが大人なのか子どもなのかによって、のんびりしていいのか急ぐべきなのか変わってきます。
斜視っぽくても成人なら緊急性は低め
成人の場合、斜視っぽくても自覚症状がなければ緊急性は低いです。
- 本当に斜視だとしても、自覚症状がない(困っていない)なら特にやることがない
- 本当に斜視だとして、見た目が気になるようなら手術するしかない
「じつは本当に斜視だった」として、「二重に見えるのが気になる」「目が疲れる」という症状があればプリズムメガネなどで対処できます。
また、「急に斜視になった」場合はしっかりと原因を探る必要があるので、すぐに眼科へ行きましょう。
しかし、じつは本当に斜視だったとしても、自覚症状がなければ特に対処することはありません。(脳疾患などがない前提)
外見が気になるなら、せいぜい手術の案内を受けるだけです。
なぜ「斜視なのに自覚症状がないのか」と言えば、「幼少期に両目の機能を獲得できていなかったから」。
つまり「子どものころから斜視があり、無治療だった」
※斜視はとても奥深いので一概には言えませんが、一般論としてはこうなります。
子どもの頃の斜視を放置すると、大人になってから不利益をこうむることに。
子どもの「斜視っぽい」には大人にはないスピード感と真剣さで取り組む必要があるのです。
子どもの「斜視っぽい」はすぐに眼科受診
お子さんの斜視を疑う場合は、すみやかに眼科を受診しましょう。
大人と違い、子どもの斜視治療は時間との勝負!
早期発見、早期治療をしないと弱視になる可能性もあります。
連れていくなら、できれば小児眼科がおすすめ。
じつは、クリニックによっては子どもの斜視を見落とされることがあります。
視能訓練士でも子どもの検査に慣れていなかったり、斜視に対する考えが甘いドクターがいたりする施設もあるので…
(同業者から反論が来るかもしれませんが、現にそういう眼科はある)
紹介状でも書いてくれればいいのですが、「経過観察で次は半年後」なんて言われてしまうと貴重な時間を失うことに。
「前の眼科ではそう言われたけど、どうしても不安で」と受診されたお子さんが斜視だったこともあります
通いやすさも大事ですが、第一選択は小児眼科をうたっているクリニックがいいですね。
まとめ
斜視っぽくても斜視じゃない外見とは、
- 骨格からそう見えるだけ
- 眼球の発達の違いからそう見えるだけ
ということでした。
「ぽい」だけで斜視ではないため、自覚症状はないですし、治療方法もありません。
(眼瞼下垂は手術が可能)
一方で、子どもの「斜視っぽい」は注意が必要です。
「ぽい」だけなら結果オーライ。
実際に「斜視だった」なら早期治療が必要です。
「斜視っぽいこともあるけど、本当に斜視のこともある」
このことを忘れずに、ぜひ眼科に相談してみてください。