「視能訓練士、いらなくね?」そんな噂を耳にしたり、視能訓練士である当のあなたがそう感じたりすること、ありませんか。
保育士をいらないと思う人は100%いないし、言語聴覚士をいらないと思う人は絶対いないし、具体的な業務内容はわからなくても作業療法士だってきっといるよね、とか思われている昨今…
なぜ、視能訓練士だけが「いらない」とか言われるの!?
いったい視能訓練士が何したって言うのよーー!
(…いや、何もしてないと思われているからでは?)
というわけで、今回は視能訓練士が「いらない」と言われてしまう理由と、「いや、いるでしょ!」と言い切れる理由をまとめました。
【プロフィール】
眼鏡屋出身の視能訓練士/ライター
目の勉強を続けて16年
斜視検査が好き
メガネが好き(所持数9本)
もし、視能訓練士不要説が流れ始めたり、自分の中で感じ始めてしまったら。
ぜひ最後まで読んで、もう一度考え直してみてくださいね。
>>「視能訓練士やめたい」と思う理由4つと愚痴りたいときの注意点
視能訓練士はいらないだろと言われる理由
視能訓練士は無能不要説は、以下のようなことを理由に噂されています。
(耳が痛いッ!)
- 業務独占資格ではない
- 視力検査は無資格でもできる
- 器械の精度が発達しているので誰でもワンプッシュで完了
- 眼鏡処方はメガネ処方でもできる
- 眼位検査はメガネ屋でもできる
- 小規模なクリニックには不要
業務独占資格ではない
視能訓練士の仕事とは専門性は高いものの、業務独占ではありません。
資格を持っている人だけがその業務を独占して行うこと。
例)医師、看護師など
視能訓練士は名称独占の資格です。
その資格を持っている人だけがその資格を名乗れること。
例)保育士、作業療法士など
つまり、視能訓練士の仕事は「視能訓練士しかできないわけではない」ということです。
視能訓練士は、保健師助産師看護師法(昭和二十三年法律第二百三号)第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として両眼視機能の回復のための矯正訓練及びこれに必要な検査並びに眼科検査を行うことを業とすることができる。
視能訓練士法 第17条第2項
視能訓練士法に書いてあるように、視能訓練士の立ち位置は、あくまで看護師の業務を一部手伝っている(診療の補助)というポジションなのです。
残念ながら、法律で定められているのでこれはゆるぎない事実…
視力検査は無資格でもできる
視力検査は無資格者でも「でき」ます。
メガネ屋さんのスタッフが全員「眼鏡士」(現在は眼鏡作製技能士)の資格を持っていなくても働けるのと同じ。
医療機関の視力検査であろうと、法律的には「無資格者でも許可されている」のです。
ここが、視能訓練士が軽んじられてしまう点です
「視能訓練士ってなに?どんな仕事するの?」
と聞かれて、「視力検査」と答えても、
「えっ、メガネ屋の求人広告で『未経験可』ってあるよ?」(そんなん医療資格取るほどのことか?)
と、白い目で見られる。。
これが現実です。
器械の精度が発達しているので誰でもワンプッシュで完了
検査するための器械はどんどん精度が上がり、簡便になってきています。
つまり、誰でも簡単に操作できて、正確な検査ができるようになりつつあります。
視力検査の基本、オートレフラクトメーターもかなり正確な数値をたたき出すようになりました。
眼底写真やOCTも、簡単な操作で高品質な写真が撮れるように。
そんなに問題ではない患者さんの検査をするにあたり、経験を積んだ視能訓練士でなくても検査ができてしまうのが現状です。
メガネ処方はメガネ屋でもできる
当たり前ですが、メガネ処方はメガネ屋さんでできます。
しかも、だいたいどこでも無料でやってくれますね。
(調べたら海外のメガネ屋さんも検眼は無料でやっているみたい)
眼科で眼鏡の処方箋をもらうには処方箋代がかかります。
眼科でメガネ処方箋をもらうメリットは、ほかに眼疾患がないか見てもらえることですが…
ただメガネを作るだけならメガネ屋さんで事足りる。
わざわざ視能訓練士に検査してもらう必要はない。
以上のような事実はあります…
眼位検査はメガネ屋でもできる
メガネ屋さんに設置されている検眼器は超優秀で、操作さえ覚えれば誰でも眼位検査や立体視検査までできます。
もちろん検査結果に基づいて、その人に合った眼鏡を処方するには経験や技術が必要。
ただ、わざわざ眼科へ来なくても斜視の検査をすること自体はメガネ屋さんでできてしまうのです。
小規模なクリニックには不要
正直、医師と受付、看護師の3人体制で回るような小さな眼科では、視能訓練士を雇うメリットがあまりありません。
視力検査は受付や看護師でもできるので、ちょっとした患者さんだけなら十分対応できるからです。
対応しきれない重症例の場合は大型病院へ紹介状を書けばいいので、「視力検査しかできない」視能訓練士は小さな町のお医者さんにはいらないかもしれません。
「ていうか誰でもできる仕事わざわざ視能訓練士に頼まなくてもよくね?」
チクショーーッ!
痛いところばかり突きやがって。。。
このままやられっぱなしでいられるか!
「視能訓練士はいらない」なんて言わせない理由
さんざん「視能訓練士不要説」がささやかれましたので、これから論破していきたいと思います。
- 「許可されている」と「技能がある」の違い
- OMAの廃止
- 「視能訓練士さんはいますか?」の問合わせ
- 眼鏡作製技能士の登場
- 「視能訓練士不要」の病院はこちらから願い下げ
「許可されている」と「技能がある」の違い
「法律上許可されていること」と「技術を持っていること」は違います。
確かに視能訓練士は業務独占ではないので、看護師や臨床検査技師でも眼科領域の検査は許可されてますよね。
保健師助産師看護師法により看護師は基本なんでも「できる」し、臨床検査技師等に関する法律により臨床検査技師は無散瞳下での眼底写真撮影が「できる」。
でも、私は看護師で眼位検査から斜視弱視訓練までやっている人を見たことがありません。
(探せばいるかもしれないけど)
臨床検査技師が行う散瞳薬を使わない眼底写真は、撮影範囲が狭いため、どの患者さんにも適応するわけではありません。
眼疾患を抱えている患者さんには、散瞳薬を使ってじゅうぶん瞳孔を広げた後、必要に応じて網膜の周辺部まで撮影します。
↑これができる看護師さんがいたとして、一体どのくらいの人がこの技術を持っているでしょうか。
「法律上許可されている」のと、技能的に「できる」は違うんです。
だから業務独占でなかろうと視能訓練士は眼科の専門家と名乗れるし、プライドを持ってスキルアップに励む意義があるんです!
眼科コメディカル(OMA)の廃止
2011年、民間資格だった眼科コメディカル(OMA)が廃止され、「OMA所持者=無資格者」という扱いになりました。
その結果、OMA所持者が視能訓練士養成校に通うことが増え、視能訓練士の必要性が高まっています。
私の視能訓練士の友人も半数は元OMA
何度も言われているように、視能訓練士のデメリットは眼科検査が無資格者でもできる点ですよね。
このOMAの廃止は、たとえ無資格者の検査が許可されているとしても、視能訓練士の優位性、重要性を眼科界が認識しているということになります。
「視能訓練士さんはいますか?」の問合わせ
「子どもの検査をしてほしいんですけど、視能訓練士さんはいますか?」と問合せが来ることがあります。
視能訓練士の存在を知っていれば、視能訓練士のいる眼科で診てもらいたいと考えるのは、親としては当たり前ではないでしょうか。
ではなぜ「視能訓練士さんはいますか?」と問合せが来るかと言えば、数が少ない&認知度が低いから。
整形外科に電話して「理学療法士さんはいますか?」とは聞きませんよね…
テレビで特集でも組まれない限り、全国規模で知名度が広がるとは思えません。
であれば、視能訓練士の有用性をもっと世に知らしめる必要がありますよね。
少しでも認知度を上げる方法として、私もこのサイトを運営しています。
ブログでもSNSでも、視能訓練士としての情報発信を続けることが大事だと思います。
認知度が上がれば眼科だけでなく、一般の患者さんも視能訓練士の意義に気づいてくれるはずです。
眼鏡作製技能士の登場で眼鏡関連の地位向上
民間資格だった認定眼鏡士が、2021年国家検定資格の眼鏡作製技能士として再スタートすることになりました。
眼鏡検査、眼鏡作製の重要性を厚労省が認めたんです。
「それ、ますます視能訓練士が不利になるんじゃない?」
そうではありません。
眼鏡作製技能士は半医半商であることに変わりなく、視能訓練士は完全なる医療職です。
視能訓練士はメガネに関する技術はないし、眼鏡作製技能士は斜視訓練の技術はありません。
お互いに重なる役割はありますが、それぞれ独立していながら支え合う、二人三脚のようなイメージです。
目指すところは「お客さん/患者さんの快適な視生活」であり、手を取り合うことはあってもライバルではありません。
「視能訓練士不要」の眼科はこちらから願い下げ
- 視能訓練士を雇う余裕がない
- 視能訓練士などいらない
残念ながら、上記のような眼科もあります。
視能訓練士の重要性を理解しない眼科に、「そんなこと言わないでくださいよ~」とすり寄る必要はありません。
経営難で給与の高い視能訓練士が不当解雇された話もありました。
他業種ならまだしも、本業である眼科がそのような立ち位置であるなら、そんなところはこちらからお断りです。
眼科、眼鏡業界がこれだけ専門性の高さで盛り上がりつつある時代です。
視能訓練士不要説を唱える眼科は必ず淘汰されていくでしょう。
まとめ
器械の発達、少子化によって需要が先細るのではと、考えている現役視能訓練士もいるようです。
そう思って前に進めないくらいなら、いっそやめるか、もしくはもっとスキルアップに励む方がいいでしょう。
理屈に合わない視力検査値、感覚器としての斜視訓練、オートフォーカスが効かない長眼軸の近視眼底で中心窩を撮影。
このような「単純作業ではない検査」は、AIが発達したって視能訓練士以外にはできないはずです。
視能訓練士だからできる検査の技術をどんどん磨いて、どこでも使えるようになればいい。
「視能訓練士はいらない」なんて言わせません。