学校検診の視力検査でB判定だったけど、これって眼科に行くべき?
そんなに目が悪いようには見えないし、下の子の面倒で忙しいし、今回はスルーしてもいいかな?
視力検査のB判定は、眼科受診すべきか迷うラインですよね。
「目が悪くなっていてほしくない」という保護者の「願望」もあって、なかなか眼科を受診しないケースも多いものです。
しかしながら、もし本当に目が悪くなってきているなら?
放置されたお子さんはどうやって視覚情報をキャッチすればいいのでしょうか。
B判定をもらったけれど眼科を受診しようか迷っている人に、眼科を受診しないデメリットや受診しない言い訳をまとめています。
不快に思われる方もいるかもしれません。
ですが、私たち視能訓練士の役割は、子どもが本来見えるはずの世界を見て、感動して、感受性を高めてもらうために最善を尽くすことです。
そのためには多少、保護者の方の「イタいところ」を突く形になるのもやぶさかではありません。
できれば本記事を読んでいただき、子どものためには何がベストかをよくよく考えてほしいと思います。
【プロフィール】
眼鏡屋出身の視能訓練士/ライター
目の勉強を続けて16年
斜視検査が好き
メガネが好き(所持数9本)
【結論】視力検査で引っかかったら眼科に行くべし
結論として、視力検査で引っかかったらすみやかに眼科を受診しましょう。
視力検査結果の見方
- A(1.0)
- B(0.7~0.9)
- C(0.3~0.6)
- D(0.3未満)
視力検査でA以外なら、眼科を受診する意義は十分にあります。
でもB判定のはずが、じつはCあるいはDだったら?(実例としてわんさかあります)
学校検診はあくまで目安。プロが図っているわけではないので、誤差はあります。
B判定でも結果的にAだったらそれに越したことはありませんよね。
子どもの将来を考えるなら、眼科受診に1時間ほどかけることはたいした手間ではないはずです。
学校検診の視力検査でB判定でも眼科に行かないと…
学校検診の視力検査に引っかかったのに、眼科を受診しないと次のようなことが起こります。
- 近視や遠視を見落とされる
- 弱視を見落とされる
- 「よく見えないまま」放置される
- メガネへの心の準備ができない
「眼科に行ったらメガネを作らされる。メガネをかけ始めたらもっと目が悪くなる」という誤解をいまだに信じている保護者さんも多いです
近視や遠視を見落とされる
近視の始まりや、遠視を見落とされます。
近視の始まりを見落とされると、のちに眼科受診したときには相当目が悪くなっていて、
強いメガネをかけざるを得ない
↓
慣れられない
↓
メガネをかけられない
↓
見えない
の悪循環に陥ります。
メガネは近視が弱いうちから始め、段階的に度数を上げていくべきです
百歩譲って近視ならまだいいですが、裸眼視力に影響するほどの遠視を放置していると、弱視になってしまう可能性があります。
子どもの多少の遠視はほとんど問題になりません。むしろ、裸眼視力は「A」でよく見えているはずです。
ところが、B(またはB以下)の遠視だと、強度遠視が潜伏している可能性を捨てきれません。
強度遠視は弱視の原因にもなります。
>> 遠視ってなに?老眼とは違う?どこよりもわかりやすい遠視の解説
弱視を見落とされる
B判定で眼科を受診しないままだったが、じつは「弱視だった」というのが一番避けたいケースです。
学校検診で弱視と分かったとなると、 3歳児検診や就学時健診など、これまでの検査をすべてすり抜けてきてしまったということになります。
視力が完成してしまう8歳頃のギリギリになって弱視と分かった場合、大至急の治療が必要です!
弱視の程度によりますが、視機能が完成していなければ、まだ回復の見込みはあります!
しかし、低学年の学校検診で引っかかったのに放置し、高学年になってから初めて弱視と分かっても、弱視治療は手遅れになってしまいます。
「よく見えないまま」放置される
学校検診の結果がBでも、じつはC(またはD)だった、ということもけっこうあります。
つまり、B判定の視力 (0.7~0.9) すらない悪い目なのに、何の対処もされずほったらかしにされていたということ。
想像してください。
授業を受けても実は黒板の文字がよく見えていないから、授業が遅れてしまう。
遠足や家族旅行へ行っても、みんなと同じ景色を共有できていない。
見えている子との学習に差が開いてしまう、同じ感動を味わえない、そんなお子さんを。
眼科に行かないということは、見えるはずのものが見えていない、制限付きの世界しか知らないお子さんを放置するということです。
メガネへの心の準備ができない
B判定を放置して眼科に行かないと、かなり目が悪くなった状態で初めて眼科を受診することになるでしょう。
その結果、「初眼科=初メガネ」になり、家族内でも意見が割れることがよくあります。
お子さんはすでにメガネを必要としているのに、作るか作らないかで保護者が迷っている。
その間に、お子さんはやはり「家族や友達と共有できる感動を失い続ける」ことになります。
夫婦間で意見が割れることもよくあります。B判定をもらったら、あらかじめ家庭内で話し合いをしておきましょう
初めてのメガネを作るとき、保護者の心理としては「本当にメガネが必要なのかな?」と受け入れがたい気持ちがあるはずです。
しかし、弱い近視から徐々に悪くなっていく過程を見ていれば、「さすがにそろそろメガネはあった方がいいだろう」と受け入れやすくなるもの。
眼科を受診しないと、この「過程」を理解できないので、保護者も本人もメガネへの心の準備ができなくなります。
B判定でも眼科に行かない保護者のよくある言い訳
「学校検診で引っかかったのに、なぜ眼科を受診しなかったんですか?」という問いに対する、保護者の回答をランキングしてみました。
- 第一位 忙しくて
- 第二位 去年はAだったから
- 第三位 検査がうまくできないだけと思ったから
- 第四位 以前もBで眼科に行ったら「様子見」と言われたから
- 第五位 悪いのはわかっていたけど何となく後回しに
統計はとっていません。あくまで私の体感的な順位づけです。
第一位 忙しくて
「行かなきゃとは思っていたけど、ちょっと忙しくて」
多いのはこれ。
春の眼科検診で引っかかって、その年の冬休みに受診する人もいます。
忙しいとは便利な言い訳ですが、要するに優先順位が極めて低かったということでしょう。
第二位 去年はAだったから
「去年はAだったから、何かの間違いかと思って」
去年はAでも、今年はB、ということはざらにあります。
子どもの成長は早く、近視も進みやすいもの。
去年は去年、今年は今年です。
第三位 検査がうまくできないだけと思ったから
「うちの子は落ち着きがなくて、たぶんうまくできなかっただけなんです」
実際、そういう子もいます。
結果的にうまくできなかっただけで、眼科で検査をやり直したらきちんとできる子も多いです。
でも、本当にうまくできなかっただけかどうか?
それを判断するためにも、眼科を受診してください。
第四位 以前もBで眼科に行ったら「様子見」と言われたから
「おととしもBだったんで眼科に行ったら、『様子見』と言われて。去年も引っかかったけど、眼科には行ってません」
そう言って、2年ぶりに眼科受診するお子さんもいます。
かなりの確率で、だいぶ近視が進んでいるパターンですね。
眼科の「様子見」とは、
- また何かあれば受診
- 様子見だけど定期的に受診
以上のどちらと解釈するかによってその後が変わります。
学校検診で引っかかったお子さんの場合、多くは②定期的な受診が望ましいです。
第五位 悪いのはわかっていたけど何となく後回しに
「毎年引っかかっていて、目を細めて遠く見てるのもわかってるけど、何となくずるずる来ちゃって」
これは最悪なパターンですが、実際にいます。
いや、もっと最悪なパターンがこちら。
「本人も見えづらいと言ってたけど、本当だとは思わなくて」
お子さんが「見えづらそうにしている=困っていそう」なら、手を差し伸べてあげてください。
子どもは保護者を頼るしかないのですから…
まとめ 一番の被害者は子ども
B判定でも眼科に連れて行かない理由はいくらでも言えますが、「きちんとメガネをすれば、しっかり見えていたはずの時間」を奪うことには変わりありません。
子どもの1年と大人の1年はまったく違います。
目が悪いと認めたくない、近視の進行を認めたくない。
その気持ちはわかります。
そのような心理が「眼科を受診しなければ」という義務感にブレーキをかけていませんか?
保護者の心情と「お子さんがメガネを必要としているかもしれない」という事実は、分けて考える必要があります。
お子さんの目が悪くなるのは、あなたのせいではありません。
あなたがお子さんのことを大切にしているのはわかっています。
だから、お子さんにとって一番いい選択をしてあげましょう。
「あなた」ではなく、「お子さん」にとってのベストな選択は何か、よく考えてほしいと思います。
本記事を読んで、「図星かも」と思われたら、なるべく早めに眼科を受診してくださいね。